マウスの受精卵が細胞分裂してできた「胚盤胞」から新たな幹細胞「PrES(プレス)細胞」(原始内胚葉(ないはいよう)幹細胞)を作製したと、理化学研究所と千葉大のチームが3日付の米科学誌サイエンス電子版に発表した。この細胞を混ぜた塊をマウスの子宮に移植したところ、着床後すぐの通常の胚と似た構造に成長したという。
胚盤胞は、①主に体になる細胞②胎盤になる細胞③胎盤ができるまでの栄養源となる卵黄のうになる細胞――の3種類の細胞からなり、このうち2種類から既にES細胞(胚性幹細胞)とTS細胞(胎盤幹細胞)の二つの幹細胞が作られている。三つ目のPrES細胞がそろったことで、幹細胞だけを使った生命誕生につながる可能性があるという。チームは「最後のピースができた。人工的に生命を再構築できる技術への第一歩だ」としている。
理研の大日向(おおひなた)康秀客員研究員らのチームは、マウスの受精卵を胚盤胞に成長させた後、特殊な条件下で培養し、卵黄のうになる能力を持つPrES細胞を作製。これを、薬剤で卵黄のうになる細胞をなくした胚盤胞に注入したところ、育たないはずの胚盤胞が成長を続け、正常な子マウスが誕生したという。
さらに、三つの幹細胞を混ぜ合わせた塊を雌マウスの子宮に移植し、約1週間観察した結果、2~3割の確率で着床し、着床後すぐの通常の胚に似た構造まで変化したという。正常な胚にはならず、子マウスは生まれなかった。
胚盤胞を人工的に作る研究は国内外で行われている。米豪の2チームは2021年、ヒトの幹細胞などを使い、胚盤胞に似た細胞の塊を作製したと発表した。
大日向研究員は「数十個の細胞からなる胚盤胞が生命の起源として機能する仕組みの解明に役立つかもしれない」と話す。マウスとヒトでは受精卵の発育の仕組みが大きく異なるため、チームはよりヒトに似たブタの細胞での研究も進めている。【荒木涼子、渡辺諒】
幹細胞や胚の研究に詳しい京都大iPS細胞研究所の高島康弘講師の話
非常に興味深い成果だ。胚の成長に対する卵黄のうの役割や、着床前後の胚の仕組みの解明につながる。ヒトとマウスとでは成長の過程の仕組みは大きく異なるが、マウスで得たアイデアをヒトに応用することで、倫理面から研究が難しい領域でも理解を深められる。
幹細胞
分裂して同じ細胞を作る能力(自己複製能)と、さまざまな部位の細胞に分化する能力(多分化能)を持つ特殊な細胞。発生や組織の再生などを担う細胞と考えられている。皮膚や血液の体細胞に遺伝子などを導入し、培養して作るiPS細胞(人工多能性幹細胞)も幹細胞の一つ。
生命の元作る「最後のピース」 PrES細胞の作製成功 理研など - 毎日新聞 - 毎日新聞
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