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DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を聞かない日はありません。業種にかかわらず多くの企業が新しい価値を創出する取り組みを進めています。DXは単に業務をデジタル化するだけでは実現しないため、「価値あるプロダクト」をどのように作るかが重要になります。
そういった背景もあり、プロダクト開発にかかる期待は大きく、開発マネジャーの負担も増すばかりです。自身のマネジメントスキルをどう成長させるか、もしくは後進のマネジャーをどのように育成すればいいか悩んでいる人は多いのではないでしょうか。
そこで本稿は、著者が考える「マネジメントスキルの基礎的な領域の伸ばし方」について解説します。
「エンジニアとしては優秀なのにマネジメントはイマイチ」は当たり前
IT業界では慢性的にIT人材の不足が叫ばれています。その中でも特に不足しているのが開発マネジャーです。DX実現の機運の高まりを受けて「DXを支える開発マネジャー」の需要が高まっています。ただ、そう簡単に適切な人材は見つかりません。
開発マネジャーが不足している理由は幾つかあると思いますが、著者は「マネジメントスキルの定義と評価」が旧世代の考え方で止まっており、価値観のアップデートやマネジャーの教育が進んでいないことが最も大きな原因だと感じます。
最近はあまり聞かなくなりましたが、以前は「エンジニア35歳定年説」がまことしやかにささやかれ、30歳を過ぎたあたりにエンジニア職からマネジメント職への転向を考える人も多かったと思います。しかし、マネジメントは「多様なスキルの塊」のため、エンジニアとしての優秀さとは別のスキルが必要になります。「エンジニアとして優秀なのに、マネジメントでは成果が出ない」という話をよく聞きますが、それも当然といえます。
受託開発が中心だったころは、マネジメントに求められるのは「期日までにプロダクトを安く作りあげること」でした。マネジャーはエンジニアの進捗(しんちょく)を管理して期日までにどうやって完成させるかに注力していれば問題ありませんでした。
ですが、今は多くの業務が「SaaS」(Software as a Service)などクラウドサービスに置き換えることができるようになりました。「自分たちで作ろうとするサービスは既に世の中にある」というケースが増えており、新規開発を始める段階で多くの競合がいる状態です。サービスを成功させるためのマネジメントの難易度は高まり、必要となるスキルも高くなっています。
そうした中で「進捗を管理するだけ」「プロダクトを完成させるだけ」のマネジメントでは不十分です。この点に気付かないと「課題に対して向き合っているのに本質的な解決策がいつまでも出てこない」といった状態に陥り、DXの取り組みも頓挫してしまいます。
開発マネジメントスキルのトライアングル
DX実現を目指すためには「早く安く作るにはどうすればいいか」というマネジメントではなく、ユーザーに価値提供し、ビジネスを成長させる開発マネジメントが必要になります。
これを「将棋」に例えると自分の持ち駒を「スキルの種類とメンバー」、対戦相手を「競合サービス」と考えることができます。もしあなたが、前にしか進めない「歩兵」と「香車」しか持ち合わせていないとしたら「金将」「銀将」「角行」「飛車」を持っている対戦相手に勝つのは難しいでしょう。勝つためにはまず自身の持ち駒を増やす必要があります。
では、どんな駒(スキル)が有効なのでしょうか。著者なりに再定義してみました。求められるスキルには3つの方向性があり、高度化するにつれて相互に影響し合い、複雑に絡み合っていきます。トライアングル構造として考えると分かりやすいと思います。
1.技術軸
将来のキャリア:CTO(最高技術責任者)
この軸のスキルに関してはエンジニアであれば誰しもが理解できると思います。プロダクトづくりの“HOW”(手段)として重要なスキルであり、実現可能性や開発速度、品質に大きく影響します。
新卒エンジニアであればプログラミングスキルなど個人の開発領域からはじめ、中堅になったらチーム全体に関わるシステムのアーキテクチャや技術選定などにチャレンジする、といった形で実践を積んでいきます。その後は開発組織全体の生産性や技術力を向上するための施策や評価制度にも関わり、会社全体の技術力や投資を最大化させるように働き掛けます。
2.人・組織軸
将来のキャリア:VPoE(技術系マネジメント責任者)
この軸のスキルはプロダクト開発力や組織力を向上させるためのものです。
タスク管理などのセルフマネジメントスキルからはじめ、中堅になったら開発チームの管理に着手し、メンバーの生産性やキャラクターを最大限に生かすためのチームビルディングを実施します。開発プロセスを最適化したり改善したりする役割も担います。
重要なスキルですが、「マネジメントとはチームを管理すること」といった誤解がある分野でもあります。開発チームを管理するだけではなく、会社としての開発力や組織力を向上させるというさらに深い領域があります。
3.プロダクト軸
将来のキャリア:PdM(プロダクトマネジャー)
この軸のスキルがあれば、価値提供と開発力のバランスを考慮して目的を定め、プロダクトを成功に導くことができます。
前述したように“HOW”は重要ですが、“WHY”、“WHAT”(何を作るべきなのか)という価値創造や課題解決力も重要です。DXを実現するにはユーザーの本質的なニーズや課題に目を向け、プロダクトの市場調査や仮説の検証も必要です。テックドリブンなサービスであればエンジニアから成長したプロダクトマネジャーが最適でしょう。
プロダクトを通じてユーザーのニーズを満たしたり課題解決したりすることはもちろんですが、重要なのはマネタイズやバリューチェーンを設計できることです。ユーザー価値とマネタイズの両輪を回すことでビジネスがスケールしてキャッシュフローが適切になるわけですが、このバランスを崩すとプロダクトの成功確率がグッと下がります。
「誰に何を提供すべきか。それはもうかるのか」という問いを突き詰める役割です。現代のITサービス開発で特に重要なポジションですが、最も人手が足りないポジションでもあります。
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「DXを支える開発マネジャー」を一からつくる方法 - ITmedia
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