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これぞ1つの“到達点” 第4世代Ryzenプロセッサの圧倒的な実力をチェック! - ITmedia

nawasana.blogspot.com

 AMDは11月6日、デスクトップPC向けの最新CPU「Ryzen 5000 Series Processors」(以下「第4世代Ryzenプロセッサ」)を発売する。当初のラインアップは「Ryzen 5 5600X」「Ryzen 7 5800X」「Ryzen 9 5900X」「Ryzen 9 5950X」の4製品で、2019年7月の第3世代Ryzen以来、実に1年4カ月ぶりの世代更新となる。アーキテクチャが「Zen 2」から「Zen 3」へと刷新されることもあり、期待に胸を膨らませるている人も少なくないだろう。

 この記事では、Ryzen 7 5800X(3.8G〜4.7GHz、8コア16スレッド)とRyzen 9 5900X(3.7G〜4.8GHz、12コア24スレッド)を用いて、第4世代Ryzenプロセッサの主な特徴とパフォーマンスを確認していく。

箱 Ryzen 9 5900X(左)とRyzen 7 5800X(右)のパッケージ

IPCの向上によってゲーム性能でついにIntel超え?

 発表会の速報記事にもある通り、第4世代Ryzenプロセッサは、7nmプロセスを採用するZen 3アーキテクチャをベースに設計されている。

 プロセス自体は従来のZen 2アーキテクチャと同じ7nmであり、トランジスタの大幅な増加による性能向上はないものの、CPUを構成する「CCX(Core Complex)」の設計が見直されているのが大きなポイントとなる。

 具体的には、従来4つのコアが16MBのL3キャッシュを共有する設計だったものを、CCX内の8基のコアが32MBのL3キャッシュを共有するように再構成した。これにより、CPUキャッシュへのアクセスに伴うレイテンシー(遅延)が抑制され、キャッシュへのアクセス速度自体も最大で2倍の高速化を果たした。

 メインメモリへのアクセスを減らすことで、処理速度をアップさせているわけだ。

アーキテクチャ 8コアのCCX同士の比較。Zen 2アーキテクチャでは4コアで16MBのL3キャッシュを共有していたが、Zen 3アーキテクチャでは8コアで32MBのL3キャッシュを共有するようになった。このことで、メインメモリへのアクセスを減らし、結果的に高速な処理を実現する

 こうした改良により、第4世代RyzenプロセッサのIPC(クロック当たりの処理命令数)は、従来比で実に19%もの改善を見せている。Ryzenのシングルスレッド性能については、これまでも世代を重ねるごとに改善してきていたが、発表会ではIntelの「Core i9-10900K」(3.7G〜5.3GHz、10コア20スレッド)とRyzen 9 5900Xを比較した場合、Ryzen 9 5900Xがシングルスレッド性能で大幅に上回るというスライドが示されて話題を呼んだ。

 ただし、それはAMDが自社で「CINEBENCH R20」のテストを行った結果。それと同様にシングルスレッドテストで600ポイントを超えるのかどうかは、ベンチマークテストを通して検証していく。

IPC Zen 2アーキテクチャ比で、IPCは最大で19%向上。先述のCCXの構造変更はもちろんだが、実行ユニット自体の改善などを積み重ねた結果でもあるという

Socket AM4を引き続き利用 400/500番台チップセットのマザーボードを使える

 第4世代RyzenプロセッサのCPUソケットは、従来と同様に「Socket AM4」だ。「AMD X570」「AMD B550」など、400番台、500番台のAMD製チップセットを搭載するSocket AM4マザーボードであれば、対応のUEFI(BIOS)にアップデートすれば第4世代Ryzenプロセッサでも引き続き利用できる(一部チップセット向けUEFIはβ提供)。

 各製品のTDP(熱設計電力)は、Ryzen 5 5600Xが65Wで、その他が105Wとなる。CPUクーラーはRyzen 5 5600Xにのみ付属する。

上下 Ryzen 7 5800Xの外観。第3世代Ryzenと同じくSocket AM4を使用するため、大きな変化は見られない
仕様 第4世代Ryzenプロセッサの主な仕様

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シングルスレッド性能に偽りなし! 大幅なスペックアップを実現

 ここからは、Ryzen 7 5800XとRyzen 9 5900Xの実力をベンチマークテストを通してチェックしていこう。

 今回の検証では、AMD X570チップセットを搭載するMSI製マザーボード「MEG X570 GODLIKE」を用いた。UEFIは原稿執筆時点で最新の「7C34v1B」にアップデート済みだ。

 CPUクーラーには240mmラジエーター搭載のオールインワン水冷ユニットを用意し、グラフィックスがボトルネックとならないように、GPU(グラフィックスカード)はNVIDIAの「GeForce RTX 3080」を利用した。ドライバーのバージョンは「457.09」だ。

 「前世代からどうなったの?」という点が気になる人もいると思うので、比較対象として第3世代の「Ryzen 9 3900XT」(3.8G〜4.7GHz、12コア24スレッド)でもテストを行った。

検証環境 検証環境
Ryzen 9 5900Xの情報 CPU-Zで取得したRyzen 9 5900Xの情報
Ryzen 7 5800Xの情報 CPU-Zで取得したRyzen 7 5800Xの情報

CINEBENCH R20

 まず、発表会でも話題になったCINEBENCH R20を実行してみよう。CINEBENCH R20は、CPUを使ったレンダリング性能を計測する定番ベンチマークアプリである。

 結果は以下の通り。数値は前者がマルチスレッド、後者がシングルスレッドのポイントとなる。

  • Ryzen 9 5900X:8309/628
  • Ryzen 7 5800X:6056/624
  • Ryzen 9 3900XT:7255/526

 発表会でAMDが示した通り、第4世代Ryzenプロセッサはシングルスレッドテストのスコアが極めて良好であることが一目瞭然だ。前世代のRyzen 9 3900XTのシングルスレッドスコアは500台前半に留まっており、第4世代Ryzenとのスコア差は約17%ほどである。

 公称では、IPCの向上幅は最大19%とされているが、このスコア向上もそれに近い。シングルスレッド性能の向上幅は驚異的という他ないだろう。

 一方、マルチスレッドテストのスコアも前世代比で13%ほど高く、順当に数値が伸びている。

CINEBENCH R20 CINEBENCH R20の結果

 CINEBENCH R20を3回連続で実行した場合のCPU温度の推移と、平均実効クロック(Average Effective Clock)をグラフ化してみた。

 ベンチマーク中の実効クロックはRyzen 9 5900Xがおおむね4.25GHz前後、Ryzen 7 5800Xが4.53GHz前後、Ryzen 9 3900XTが4.06GHz前後。テスト中はほぼブレずに推移した。

 CPU温度はRyzen 9 5900Xが最大でほぼ70度、Ryzen 7 5800Xがやや高く最大83度、Ryzen 9 3900XTが最大72度前後となった。この結果を見る限り、動作クロックが高めのRyzen 7 5800Xに限り、360mmラジエーター搭載の水冷CPUクーラーを用意した方が安心できるかもしれない。

平均実効クロック 平均実効クロック
CPU温度 CPU温度

3DMark

 続いて、3D描画性能を計測する「3DMark」の結果を見てみよう。DirectX 12を用いる「Time Spy」シリーズのテストと、DirectX 11を用いる「Fire Strike」シリーズのテストをそれぞれ実行した。

 まずはTime Spyシリーズのテスト結果からチェックする。フルHD(1920×1090ピクセル)で描画する「Time Spy」と、WQHD(2560×1440ピクセル)で描画する「Time Spy Extreme」共に、CPUごとに総合スコアの違いが若干出た。前者がTime Spy、後者がTime Spy Extremeのスコアだ。

  • Ryzen 9 5900X:16750/8565
  • Ryzen 7 5800X:16321/8123
  • Ryzen 9 3900XT:16634/8489

 両方のテスト共に傾向は同じで、Ryzen 9 5900Xから僅差でRyzen 9 3900XTが続き、少し離れてRyzen 7 5800Xが来るといった感じだ。

 CPUによる処理に着目した「CPU」のスコアに目を移すと、各CPUでより大きなスコア差が出ている。前者がTime Spy、後者がTime Spy Extremeのスコアだ。

  • Ryzen 9 5900X:13353/7457
  • Ryzen 7 5800X:11645/5588
  • Ryzen 9 3900XT:12497/6834

 もっとも、比率で出すとRyzen 9 5900XとRyzen 9 3900XTのスコア差は約7%、Ryzen 9 3900XTとRyzen 7 5800Xでもスコア差は約7%と、それほどセンセーショナルな差ではない。

 CPU利用の並列度が高いDirectX 12を用いることもあって、マルチスレッド動作に強いCPUが素直にスコアを出している印象だ。

Time Spy 3DMark(Time Spy)の結果

 一方、DirectX 11を用いるFire Strikeシリーズのテストでは、Time Spyシリーズとは異なる傾向の結果が出た。総合スコアでRyzen 7 5800XがRyzen 9 3900XTを逆転したのだ。具体的なスコアは以下の通り。数値は、1つ目がフルHDの「Fire Strike」、2つ目がWQHDの「Fire Strike Extreme」、4つ目が4K(3840×2160ピクセル)の「Fire Strike Ultra」のスコアだ。

  • Ryzen 9 5900X:33585/20524/11083
  • Ryzen 7 5800X:34587/20379/11108
  • Ryzen 9 3900XT:30443/19868/11045

 DirectX 11を用いるゲームでは、マルチスレッド性能よりもシングルスレッド性能の方がパフォーマンスを左右する傾向にある。Zen 3の特徴であるIPCの向上と動作クロックの高さが逆転劇をもたらした格好だ。

 最新世代のタイトルではなく、レガシーなFPSなどをメインで遊ぶゲーマーなら、動作クロックの高いRyzen 7 5800Xは強力な選択肢となるだろう。

Fire Strike 3DMark(Fire Strike)の結果

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FF14ベンチマーク/FF15ベンチマーク

 負荷が軽いゲームについて、もう少し検証してみよう。実ゲームを元にしたベンチマークソフト「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」で、画質を「最高品質」、フルスクリーンの設定を適用し、フルHD、WQHD、4Kの3パターンで結果を計測してみた。

 FF14ベンチマークはDirectX 11を利用するが、相対的に負荷の少ないフルHDとWQHDのテストでは、無視しがたい大差を付けて第4世代RyzenがRyzen 9 3900XTに勝利している。第3世代Ryzenの中では比較的ゲームを得意としているRyzen 9 3900XTであっても、最新世代のRyzenを相手にするとこれだけの差をつけられてしまう。いささか衝撃的である。

 現状でも、DirectX 11を利用するゲームタイトルは多い。それを踏まえると、今後ゲームにおいて第3世代Ryzenを選択すべき理由はほとんどない

 さらにいうなら、競合であるCore i9-10900KとGeForce RTX 3080を組み合わせた場合でも、スコアはフルHDで23000を超えるのがせいぜいである。第4世代Ryzenほど優れた結果は出ない

FF14ベンチマーク FF14ベンチマークの結果

 より負荷の大きい、DirectX 12ベースの「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK(FF15ベンチマーク)」のスコアも確認してみよう。画質は「高品質」、フルスクリーンの設定を適用し、フルHD、WQHD、4Kの3パターンで結果を計測している。

 グラフィックス負荷が大きく、GPUがボトルネックになってしまうWQHDと4Kの計測では、それぞれのCPUのスコアの違いは微々たるものである。しかし、それが軽くなるフルHDのテストでは、FF14ベンチマークと同様に第4世代の2つのCPUがRyzen 9 3900XTを突き放した。

 特にフルHDで高いフレームレートを出したい状況では、第4世代Ryzenには大きなメリットがあるといえる。

FF15ベンチマーク FF15ベンチマークの結果

消費電力当たりの性能も確実に向上

 最後に、システム全体の消費電力をチェックしよう。

 起動後10分間何もせずに安定させた場合の値を「アイドル時」、3DMarkのTime Spy Extremeを動作させた際の最高値を「高負荷時」として、ワットチェッカーで計測した。結果は以下の通り。前者がアイドル時、後者が高負荷時の値だ。

  • Ryzen 9 5900X:57W/465W
  • Ryzen 7 5800X:57W/430W
  • Ryzen 9 3900XT:56W/452W

 アイドル時の電力はどのCPU利用時でも大きく変わらない。しかし、高負荷時はRyzen 9 5900Xが465W、Ryzen 7 5800Xが430W、Ryzen 9 3900XTが452Wと、それなりに消費電力は大きくなる。

 ただ、Ryzen 9 5900XとRyzen 9 3900XTを比較した場合、Ryzen 9 5900Xのピーク時の電力はわずかに13Wしか上昇していない。消費電力当たりのパフォーマンスの向上についても、AMDがアピールした優秀さは的外れなものではないといえそうだ。

消費電力 消費電力の比較

ゲーム性能強化で“敵なし” Ryzenの1つの”到達点”

 ベンチマークテストの結果を見れば分かる通り、第4世代Ryzenプロセッサは特にシングルスレッド性能、ひいてはゲームパフォーマンスの向上に関し、前評判にたがわぬ優秀な結果を残している。これらは初代のRyzenから課題とされてきた部分ではあるが、第3世代Ryzenで競合とほぼ同等のレベルに上り詰め、第4世代でついに抜き去った。鮮やかなジャンプアップを果たしたAMDの堅実な仕事ぶりは、大いに賞賛されるべきだろう。

 マルチスレッド性能に関しては既に定評あるRyzenがより強大な力を得たことで、第4世代Ryzenはシリーズにおける“ひとつの到達点”として、多くのユーザーの人気を集めることになるはずだ。

イメージ図

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