既報の通り、Amazon(アマゾンジャパン)とヤマダホールディングスは2月17日、船井電機製の「FUNAI Fire TVスマートテレビ」を3月5日に発売することを発表した。
Amazonとヤマダホールディングス(旧ヤマダ電機)は、ある意味で「水と油」のような関係であるように思える。現に、ヤマダホールディングスの創業者である山田昇社長は他メディアのインタビューでAmazonの存在に否定的な趣旨の発言をしたこともある。それだけに、Fire TVの機能を統合したスマートTVを両社が連携をして発売することは、インパクトの大きなニュースでもある。
両社はなぜ手を組むことになったのか。2月17日に行われた発表会の模様を見てみよう。
製品の概要(おさらい)
FUNAI Fire TVスマートテレビは、AmazonがAndroidをベースに開発した「Fire OS」で稼働するスマートTVだ。地上波/BS/110度CSデジタル放送やBS/CS 4K放送(F340シリーズのみ)に加えて、Amazon Prime Videoを始めとするFire TVシリーズで利用できるストリーミング動画サービスを楽しめることが特徴である。
海外にはFire OSを搭載するスマートTVが幾つか存在するが、日本ではFUNAI Fire TVスマートテレビが初めてとなる。
現在放送中のTV放送や録画した番組といったストリーミング動画サービス“以外”のコンテンツも同一画面に表示される。そのため、コンテンツの“在りか”を意識することなく、気分や目的に合ったコンテンツにアクセスしやすいという。
既存のFire TVシリーズ同様に、最大6人分のプロファイルを作成することが可能で、家族のそれぞれが「お気に入り」や「ウォッチリスト」を登録/利用したり、見ていたコンテンツの続きを再生したりできる。
セットアップの手軽さもウリの1つだ。本製品に電源ケーブルとアンテナ線をつなぎ、画面に表示される指示に従ってWi-Fi(無線LAN)に接続した後、Amazonアカウントを入力してセットアップすれば、視聴の準備が完了する。
付属のリモコンは「Amazon Alexa」に対応し、セットアップを済ませるとAlexaスキルを使った多様なサービスを利用できる。Amazon Echoシリーズのスマートスピーカー/スマートディスプレイとペアリングをすれば、リモコンに話しかけて操作可能だ。Alexaボタンを押せば音声入力を待ち受けるため、ウェイクワードが不要なのも魅力だ。Alexaによる操作に対応するスマートホームデバイス(カメラ、照明、セキュリティシステムなど)のコントロールにも対応する。
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なぜAmazonとヤマダホールディングスは手を組んだ?
スマートTVは、動画/音楽のストリーミングアプリやVOD(ビデオオンデマンド)サービスに直接アクセスできるため、単体で楽しめるコンテンツの幅が従来のTVよりも広くなっている。加えて、スマートTVは音声エージェントサービスと結び付くことで、家庭の生活環境をより良くするツールの1つとなりうる。
ヤマダホールディングスの立場からすると、この“生活環境をより良くする”というポイントがAmazonとの協業につながったようだ。同社の村澤圧司取締役はこのように語る。
「お客さまがTVを快適に視聴できるような環境を整えるべく、家具や電動ソファなどと合わせて提案することを使命とするヤマダホールディングスと、コロナ禍で需要が増しているストリーミングサービスにおいて、コンテンツや技術力などを持つAmazonの組み合わせは、非常に意味がある」
全国に実店舗を抱え、TVの実機を並べて販売してきたヤマダホールディングスと、これまでEコマースで成功してきたAmazonがタッグを組むからこそ、利便性に富んだ合理的な製品ができると考えたのだろう。
一方、Amazonの立場はどうなのか。同社Amazonデバイス事業本部の前田隆志事業本部長によると、Fire TVシリーズの中でも、スティック型の「Fire TV Stick」は、シリーズ累計で1億5000万台以上を出荷しているという。そんなFire TVを「TVに内蔵することで、非常に面白いことができると考えた」そうだ。
端的にいえば、Amazonのあらゆる体験が1台のTVでこなせることに意味を見いだしたのである。
ネット全盛の時代でもTVは「キラーコンテンツ」となる
ただ、最近は「ストリーミング動画サービスは見るけれど、TV番組は全く見ない」という人も少なくない。その文脈から「TVチューナーのないTVが欲しい」という声もよく耳にする。事実、ドン・キホーテが発売したTVチューナーレスの「ネット動画専用スマートTV」は2021年12月に発売するとあっという間に品切れとなるほどの人気を集めた。
それに対して、FUNAI Fire TVスマートテレビにはTVチューナーが搭載されている。しかも、USB接続のHDDを用意すれば番組の録画も可能だ。
なぜ、TVチューナーを搭載したのか――村澤氏は「最大のキラーコンテンツはTV番組である」とその理由を語る。“TVであること”にこだわりつつも、「TVとストリーミングの両方をシームレスに楽しめる製品」(村澤氏)として、訴求していく考えのようだ。
開発/製造は船井電機が担当
FUNAI Fire TVスマートテレビの製造は、「FUNAI」の名の通り船井電機が担う。同社はAV機器の受託開発/生産(OEM業務)で定評があり、日本国内ではヤマダホールディングスと独占販売契約を締結し、自社で開発/生産したTVやBlu-ray Discレコーダーをヤマダホールディングス傘下の家電量販店を通して販売している。Fire OS搭載のスマートTVも、両社の契約(定型)の延長線にあるようだ。
発表会には船井電機の足立元美取締役も登壇し、「国内で最も多くの販売店を抱え、暮らしを丸ごと提案するヤマダホールディングスと組むことで、お客さまの本意に沿った製品を開発できる」と独占販売契約のメリットを強調した。
ヤマダホールディングスの村澤氏も、「長年のパートナーである船井電機に開発と製造を委託することで、新製品を生み出すことができた」とした上で、「幅広い世代の人により便利なTVをお楽しみいただけるのではないか」とFUNAI Fire TVスマートテレビに対する期待を語った。
時代を先取りするための提携
ヤマダホールディングスの山田昇社長は「Amazonとの協業によって、時代を先取りできるかもしれない」とした上で、「FUNAI Fire TVスマートテレビの発売を契機に、それぞれの強みを生かしたコンテンツやサービスを強化し、今回の協業を将来的に発展させたい」との考えを明らかにした。同社としては、今回の提携を契機にAmazonとの協業を深めたいようだ。
Amazonのジャスパー・チャン社長も、山田社長の発言に応える形で「まずはFUNAI Fire TVスマートテレビを成功させて、新しい生活様式に貢献できればうれしい」とコメントした。
ここまでお伝えしたように、「コンテンツ主導の体験」と「スマートホームのハブ」をセットにしたFUNAI Fire TVスマートテレビは、単に「FUNAI」の名を冠したスマートなTVにとどまらず、ライフスタイルの変化をもたらす存在になるかもしれない。
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