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「楽しく作る」が隠し味 酒田フレンチ・太田シェフ、弟子ら悼む声 - yamagata-np.jp

2021/12/31 13:23

弟子の阿部三喜夫さん(右)らと笑顔を見せる太田政宏さん(左)=2017年10月(阿部さん提供)

 県内フランス料理の第一人者として活躍し、庄内地域の洋食料理人でつくる「庄内DECクラブ」を創設したシェフ太田政宏さん(酒田市)が今月、78歳でこの世を去った。地元食材を使った「フランス風郷土料理」を生み出し、多くの人をうならせた料理人。病を患いながら最期まで後進の育成に力を注いだ。その情熱は「酒田フレンチ」として、いつまでも受け継がれる。

 太田さんは、酒田市の映画館「グリーン・ハウス」やフランス料理店「レストラン欅(けやき)」「ル・ポットフー」の支配人として活躍した故佐藤久一氏に招かれ、酒田に移り住んだ。両料理店で料理長、「ロアジス」で最高顧問を歴任し、作家や著名人から高い評価を得た。2005年に県庄内総合支庁から「食の都庄内」親善大使を委嘱され、庄内の食の魅力をPR。酒田調理師専門学校や旧天真学園高などで指導にも当たった。2年前に骨髄異形成症候群を発症。入退院を繰り返し、今月16日、天国へ旅立った。

 「料理が好きで、楽しいことが好きな人だった」。レストランNico(酒田市)のシェフで次男の舟二さん(45)はそう口にした。幼い頃、フレンチに限らず、和食や中華など多様な料理を自宅で作る父の姿があった。舟二さんがシェフとなってからは欅で共に腕を振るった。印象に残る太田さんのスペシャリテは「ガサエビのマリニエール(漁師風)」。ブイヨンでガサエビを煮出すシンプルな料理だが、同じレシピでも「本人にしか作れない味だった」と振り返った。

 多くの料理人仲間、弟子たちを引きつける気さくな人柄だった。弟子の一人が、酒田市の「西洋割烹 花月」オーナーで同クラブ顧問の阿部三喜夫さん(60)だ。酒田調理師専門学校に入った19歳のころから、西洋料理の基礎を太田さんに学んだ。仙台市内の料理店を経て庄内に戻り、太田さんがグランシェフをしていたル・ポットフーで共に働いた。「いつも優しくて、仕事も遊びも全力だった」と阿部さん。若い頃、休日は一緒に海で泳いだり、スキーに行ったりしたという。

 生前、頼まれていた通り、阿部さんは葬儀委員長を務めた。出棺時には弟子と同クラブ役員の10人はコックコートで正装した。「亡くなる前日も話した。覚悟はしていたけど、心にぽっかり穴が空き、まだ実感が湧いていない」と漏らした。

 「食の都庄内」親善大使を共に務めた日本料理調理人の土岐正富さん(70)=庄内町=は、太田さんの退院を心待ちにしていた。「コロナ禍で打撃を受けた分、これから庄内を活性化しようというところだった。また切磋琢磨(せっさたくま)できると思っていた」と語った。

 44年前から講師を務めていた酒田調理師専門学校では、入院直前の11月1日が最後の授業となった。同校には、太田さんが教えてきた料理を記した分厚いレシピ集が残っている。「楽しく、おいしく作るが(太田)シェフのモットー。その思いとともに、酒田フレンチの歴史を引き継いでいかなければならない」(阿部さん)。関係者の間には喪失感が広がるが、太田さんの味は、これからも楽しむことができる。庄内地域で活躍する弟子たち、レシピ集を基に学ぶ学生たちがいるのだから。

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