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「立ち止まる社会」作る仕掛け - 読売新聞

 エスカレーターでは片側に寄り、空いた側を人が歩く。昔から各地に暗黙のルールがあります。実は正しい乗り方ではなく、昇降機メーカーが推奨しているのは「両側に立ち止まる」「急いでいる人は階段を使う」です。

 埼玉県では10月、立ち止まって利用するよう義務づける全国初の条例が施行されました。しかし、罰則はなく、効果が出るまでには時間がかかるようです。

 人々の行動を変える方法はほかにあるのでしょうか。

 兵庫県内の女性(76)が社会部に手紙でアイデアを寄せてくれました。コロナ禍でいつの間にか定着した、あの印です。

 手紙を読みながら私自身のことを振り返りました。エスカレーターでは立ち止まるよう心がけていますが、「片側空け」をやめるのは勇気がいります。何度かふさぐように立ったこともありますが、後ろの人に「急いでいるからどけ」と怒られそうで断念しました。

 片側空けの発祥は1967年頃、阪急の梅田駅(現在は大阪梅田駅)と言われています。「歩く方のために左側を空けてください」とアナウンスされ、各地に広がりました。後に推奨されなくなったのは歩く人との接触で転倒事故が起きるためです。

 メーカーで作る団体によると、エスカレーターで歩くなどの「乗り方不良」の事故は、2018年1月からの2年間で805件あります。

 駅では「立ち止まりましょう」というアナウンスを耳にします。それでも「みんながやらないと難しい」という感覚の人が多いと思います。

 現状を変えるために今回の投稿者の女性が提案するのは、ステップに「足の形」を付けるというアイデアです。

 数年前から必要性を感じていたそうで、手紙には「コロナ禍でスーパーのレジ付近の床にマークが貼られたら、みんなそこで待つようになりましたよね」とありました。

 同じ思いを持っている人はほかにもいるようです。調べてみると、東京では大学生が実験を始めていました。

 世の中には手足に障害があり、右側(左側)でないと手すりにつかまれない人がいます。小さな子どもは親と手をつなぎ、並んで乗ったほうが安全でしょう。文京学院大経営学部の新田都志子教授のゼミでは、「左右どちらでも立ち止まって乗れる社会」をテーマに、どうすればいいか議論してきました。

 考えたのは「自然と立ち止まってしまうデザイン」でした。手すりに記す「ぎゅっ」という文字やイラスト、ステップの足形のマークなどを作り、商業施設に期間限定で導入してもらいました。足形を付けた施設でエスカレーターで歩く人の割合を3日間、調べると、2割から1割に減る効果が出たそうです。

 「こうしましょう」という呼びかけでは、多くの人の習慣まで変わるものではないでしょう。しかし、言葉ではなく、ちょっとした仕掛けで行動が変わることもあります。

 あなたが利用するエスカレーターにも、足形が登場する日が来るかもしれません。

 【今回の担当は】中西千尋(なかにし・ちひろ) 大阪の街の今を追う。前任地の神戸では震災で犠牲になった女児の父と親友の交流を連載。28歳。

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