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モチベーションの高いチームを作る「自律・共感・挑戦」の3要素を解説 - CNET Japan

 新型コロナウイルスによる不可逆な変化、その一つに働き方の多様化があるといっても差し支えはないだろう。会社の徒歩圏内に住む週5出社の若手営業マン、週2出社のマネージャー、出社は月一程度のエンジニア、コロナを機に地方へ移住し、必要に応じて出張で出社するフルリモートのマーケター、まだ対面では会ったことがない業務委託のPRパーソン、そんなチーム構成が当たり前の時代になった。

 加速する働き方の多様化にようやく慣れてきたと思った矢先、緊急事態宣言は解除され、再び朝の電車は混み合い、新型コロナの流行前のような働き方が戻りつつある会社も出てきている。目まぐるしい変化の中で戦い抜くために、どこからチームビルディングに取り組めばよいのか?本稿では一つの切り口を提案する。また本稿ではチームビルディングという言葉をいわゆる「新チーム結成時の一時的なもの」ではなく、「継続的な組織作り」として扱っていく。

チームの「モチベーション」という切り口

 働き方に関わらず、組織作りにおいて普遍的なポイントである「モチベーション」に着目した。「チームのモチベーション?上げたくないですね」。そう答える人には会ったことが無い。

 モチベーション、やる気という言葉は耳馴染みがあるものの、どうしたらそれを向上できるのか?という点のノウハウは浸透していないのが現実だ。「迷わず働けるようきめ細かな指示をする?」「安心して働けるよう、能力に見合った背伸びが必要ない仕事を振るようにする?」「目標達成したらボーナス倍増だと全社会議で伝えてみる?」といったことも考えられるが、モチベーションの観点では、どれも実は逆効果。

 意外と知らない、奥が深いモチベーションを巡る旅に出よう。

 モチベーションに関しては、実は20世紀から研究が行われてきている。米国の作家であるダニエル・ピンク著の「モチベーション3.0」等、わかりやすい書籍も出版されている。それも10年以上前に。

 遅れたが本寄稿を行っているウォンテッドリーが提供するビジネスSNS「Wantedly」は、同書を大いに参考にしつつモチベーション理論に基づいて設計されている。Wantedlyが提供する、「共感を軸にした人と会社の出会い」、この“共感”も大きな鍵なのである。我々がモチベーションと向き合いながらプロダクトを、そして組織を創るなかで獲得してきたモチベーションに関するノウハウをあますことなく伝えられたらと思う。

ルーティンワーク向け、課題解決向け、2種類のモチベーション

 モチベーションに関して理解するにはまず、モチベーションには2種類あることを知ることが重要だ。それは外発的動機づけと内発的動機づけ。前者は賞罰等の外部要因を通じてモチベーションを作るもの。「アメとムチ」をイメージすると良いだろう。後者は自身の内からふつふつとモチベーションが湧いて出るもの、気がついたらやってしまう、ついついやってしまう。そんなものだ。

 働くなかで前者に身に覚えがある人は少なくないだろう。一方で後者はなんとなくイメージが湧くものの掴みどころがなかなか無い、そんな印象をお持ちではないか。「モチベーション3.0」では外発的動機づけをモチベーション2.0、内発的動機づけをモチベーション3.0と定義し、モチベーションに関するOSを2.0から3.0へとアップデートすべきだと説いている。

 なぜ外発的動機づけから内発的動機づけにアップデートしなくてはならないのか?賞罰は昔からあるし、分かりやすくて良いのではないか?それらの問いに対するシンプルな答えは「外発的動機づけでは戦えない時代になったから」。これがモチベーション3.0で説かれている内容となっている。もう少し同書を引用しつつ説明していこう。

 「なぜ外発的動機づけでは戦えないのか?」、それを示すためにも一つ有名な実験を紹介する。ロウソク問題という、人の課題解決能力を測定するためのユニークな実験だ。参加者はこちらの図のような状況において、「火がついたロウソクを宙に浮かせろ」と指示される。

ロウソク問題
ロウソク問題

 ちなみに答えはこれだ。

ロウソク実験の答え
ロウソク実験の答え

 この実験には二つのグループが参加した。片方はこの問題が解けたら5ドルがもらえる報酬有りのチーム、もう片方は何ももらえない報酬無しのチーム。この2チームが参加したら何が起きたか。なんと報酬ありのチームの方が回答まで3.5分余計により多くの時間がかかってしまうという衝撃の結果が生まれてしまったのだ

 実は外発的動機づけは視野を狭め、思考を固めてしまい、課題解決のようなクリエイティブな考え方が必要な仕事においては逆効果になってしまうのだ。しかしアメとムチでモチベーションを加速させてきた記憶がある管理職の方面多いだろう。そう、それは“部分的に”上手くいくのだ。比較的単純労働が多い仕事では、外発的動機づけは一定の効果が出ることが明らかになっている。

外発的動機づけ(=モチベーション2.0)の限界
外発的動機づけ(=モチベーション2.0)の限界

 しかし、今はAIの台頭、DX推進などが叫ばれて久しく、人間が行う単純労働がどんどん減っていく時代だ。仕事が変わる。モチベーションのあり方も変わらなくてはならない。この大きなトレンドもまた、不可逆だ。アメとムチ推進派にとって泣きっ面に蜂なポイントがもう一つ、それは労働に対する価値観の変化だ。高度経済成長期、給与を稼いで、出世して、三種の神器を買って、マイホームを買って海外旅行して……という人生設計が一般的だった。

 今の世代は大きく環境が異なり、物質的豊かさは容易に得られるようになった。そして、物質的豊かさよりも、精神的豊かさを重視するようになってきているという話はよく聞くところだろう。実際に仕事に対して求める価値観も、若手世代と上司世代とで対照的だ。

従来とは異なる価値観のミレニアル世代、Z世代の台頭
従来とは異なる価値観のミレニアル世代、Z世代の台頭

 上司世代は外発的動機づけの象徴とも言える「給与」がトップ、一方で若手世代は「仕事の有意義さ」がトップ、まさに内発的動機づけの象徴だ。

 すでに若手世代はモチベーション3.0を重視する世代になっている。仕事の内容が3.0向けに変化し、働き手の価値観も3.0に変化しつつある。内発的動機づけ、モチベーション3.0から逃げられない時代に、我々はいる。ちなみに、内発的動機づけの考え方は何もビジネスパーソンに限定されてものではなく、本質に関わるものである。それ故、モンテッソーリ教育などの子育て本でもよく触れられる内容なので、先にそういった子育て本を読まれている方にとっては、アハ体験のようなカタルシスが本記事を読み進めていく上で得られるかもしれない。

 それでは口酸っぱく重要だと言及してきた内発的動機づけについて、それを生み出すエッセンスに迫っていこう。

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