総務省の要請を受け、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は、新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン学習を行う学生に対する支援策を発表した。各社とも、容量超過後のチャージを50GBまで無料にするという点は同じ。ただし、期間や適用される条件などは異なる。まずは3社の学生支援策を見ていこう。
大手3社が発表した遠隔授業支援、追加チャージが50GBまで無料に
支援策の内容は、3社ほぼ横並びだ。契約者、もしくは利用者登録しているユーザーが25歳以下の場合、契約している料金プランの容量を使い切った後のチャージが50GBまで無料になる。各社とも、通常は1GBあたり1000円(税別、以下同)に設定しており、金額に換算すると5万円相当になる。また、テザリングをオプションにしているKDDIとソフトバンクは、この料金の500円も無料にする。
スマートフォンをハブにして、タブレットやPCなどで遠隔授業を受けられるように容量を増量するというのが、支援策の狙いだ。一人暮らしの学生の場合、自宅に固定回線を引かず、モバイル回線で対応しているケースも多い。こうした事情を踏まえ、総務省が各業界団体に支援策を要請した形だ。
50GBの増量になった理由を、KDDIは「ネットワーク状況に鑑み、支援に必要な容量をトータルで検討した」と語る。ドコモは「遠隔授業やオンライン学習に必要なデータ量を勘案した」としながら、おおよその推計根拠も明かした。同社によると、1コマ90分の授業で約0.5GB、週15コマと想定して4週間分で30GBになるという。残りの20GBは、「ゼミでの活動や随意科目など、プラスαを加味した」という。ソフトバンクも、「大学の授業のコマ数を1カ月フルで受けたときの容量を考えると、これで十分ではないか」と話す。
オンラインでの遠隔授業にどのようなツールを使うかは学校によって異なるが、動画での授業を想定しているとみていいだろう。詳細な方法はまだ検討中の学校が多いが、少なくともこの容量であれば、どのようなツールでも対応はできそうだ。
期間は3社で差が出た。ドコモは5月31日までの約2カ月間、KDDIやソフトバンクは4月30日までの1カ月間となる。一方で、休校に伴う遠隔授業の終了時期は、まだ確定していない。学校によっては、ゴールデンウイーク明けからの開始になることもあり、少なくとも4月だけでは本来の支援にはならない可能性が高い。3社とも「状況を見て、延長するときにはその発表をする」と語っている。総務省からの要請を受け、取りあえずの期間として1カ月なり2カ月なりを設定したといえる。
段階制プランは料金が上がる可能性に要注意、プラン変更もありか
支援策は緊急のため、データ容量の追加を50GBまで無料にするというシンプルな方法を取ったが、あくまでもともと契約しているプランの容量を消費し尽くした後の対応になる点には注意したい。特に、段階制のプランを契約しているユーザーの場合、支援策の恩恵を受けるには、データ容量を上限まで使わなければならない。段階制プランの途中で済ませていたユーザーは、追加の支払いが発生する可能性がある。
例えば、ドコモの「ギガライト」で月間のデータ量が3GB未満で済んでいた場合、料金は3980円に収まる。ところが、支援策としての容量は追加のデータ容量になるため、7GBを超えた段階でしかチャージできない。そのため、料金は4段階目の5980円に上がってしまう。合計57GBでこの価格は、通常の料金と比べると十分安いが、1000円足せばキャンペーンで月60GB使える「ギガホ」に移行できる。KDDIの「ピタットプラン 4G LTE」や、ソフトバンクの「ミニフィットプラン」などでも、状況は同じだ。
通信費に割けるお金が限られている学生が節約しながら使いたいときは、一時的に料金プランの変更を検討してもいいだろう。例えばauの場合、4G用のプランには月7GBの「auフラットプラン7プラスN」があり、料金は5480円(ただし、6月1日に新規申し込みを終了する)。ピタットプランで上限に達するより、料金は500円安い。ドコモの場合、新料金プランで変更するメリットは薄いが、旧料金プラン内のパケットパックを変更して、データ容量を下げる手はある。
ソフトバンクは、サブブランドのY!mobileも支援の対象になった。2680円の「スマホベーシックプランS」でも50GBのデータチャージは無料になり、合計容量は53GBと10倍以上に増える。先に挙げたドコモの試算通りであれば、スマホベーシックプランSでも、遠隔授業用には十分かもしれない。
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トラフィック対策は十分なのか? MVNOはどうなる?
大手3キャリアとも学生支援策として50GBの追加に踏み切った格好だが、一時的に大容量プランと同等かそれ以上のデータ通信を利用できるユーザーが、急増することになる。トラフィックについては、十分な対策が取れているのか。この疑問に対しては、3社とも「全く問題ない」と口をそろえる。ドコモは、その背景を「一律で容量を増やすわけではなく、必要な容量が追加されていく形なので問題はない」と話す。まとめて容量を付与すると、一気にデータ通信を使われてしまう恐れがあるが、容量追加であれば、利用が分散するというわけだ。
過去に実施した支援策での実績も、トラフィックをさばけると判断した根拠になっているという。ドコモ広報部は、「災害時データ無制限モードのデータを見る限りでは、特に影響がない」と話す。災害時データ無制限モードとは、2019年に発生した台風19号の被災地で、災害救助法が適用された地域に住むユーザーに対して実施した措置のこと。2019年10月13日から11月30日にわたって提供され、データ容量の制限が一時的になくなった。今回の支援策は、地域が全国区になるものの、25歳以下で50GBまでと制限がついているため、影響は軽微といえそうだ。
大手3キャリア以外からの支援策は、まだ発表されていない。総務省からの要請は、MVNOが集うテレコムサービス協会にも出されているため、いわゆる格安SIM事業者も何らかの検討をしているとみられる。その1社であるIIJは、「支援策は現在検討中」と明かす。とはいえ、MVNOは大手キャリアから帯域単位で借り、ユーザーに提供している。その分料金が安いわけだが、総トラフィックが一気に増えると、別のユーザーに対し、速度低下などの影響が出てしまう恐れもある。MNOと同レベルの支援策を求めるのは難しいかもしれないが、MVNOならではの工夫を凝らした対応を期待したい。
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